別にちっとも幸せじゃないけど、ささいな出会いが「幸せ」なんだと錯覚させてくれた。





拓登は、12時までには家に帰れと私に言った。



どうしてだろう。


素直に拓登の言うことを聞くことができた。






鍵を開けて家の中に入ると、お父さんだけがリビングで起きていた。




「心配かけてごめんなさい」




柄にもなく謝ってみたりしてさ。





「もう二度とあんなことはするな。でも、ひどいことを言って悪かった」




どうしてお父さんが謝るの?って思ったけど、今日は黙っておく。



ちょっと気分が良いから。





「早く帰って来た私が悪いから気にしてねーよ。小遣い減らしてくれていいからホテル代にしてよ」




冗談で言ったわけじゃないのに、お父さんはくすっと笑って、冗談キツイな、と言った。