あれから一度もあのマンホールへは行かなかった。



待っているかもしれないし、待っていないかもしれない。




拓登への想いを忘れる為に、勉強をした。





拓登のことは忘れない。



宝物だから。




あの時間は。






でも、拓登へのあの苦しい想いだけは、忘れたかった。



人を好きになると、自分が見苦しく、醜くなる。



だから、そんな自分が嫌だった。






この1ヶ月で変わったことと言えば、佳世さんが戻ってきたこと。




戻ってきたとは言っても、夜には家に帰る。


一緒に夕食を食べるだけ。




相変わらず私は生意気だし、佳世さんは私のことを好きじゃなさそうだけど、家の中の雰囲気は昔とは違っていた。




少しだけ、“家庭”の温もりがあった。





本当の家族じゃないのに、3人ともが家族ごっこを演じているような。