しばらく沈黙が続いた後、拓登は家出の理由を話してくれた。
大学のサークルで仲良くしていた女友達のことを、お父さんにまた調べられたらしい。
拓登いわく、全く恋愛感情のないただの音楽仲間なんだって。
拓登は、お父さんのそういう所が許せなかった。
「変わったって思ってたんだ。俺がボロボロに傷つく姿も見てたし、彼女が退学したことも自殺未遂したことも知っていたから。親父も変わってくれたって信じてた・・・・・・」
父親だから信じたい。
父親だもん。
世界にたったひとりの。
「鈴音もお父さんを信じたかったんだよな。俺と同じだな」
「人間ってそう簡単に変われないんだね」
「でも、信じたくなる。俺も鈴音もバカってことかな」
「そだね・・・・・・」