― Summer Drop ―

謙太の方が先に目を逸らし、何も言わずに本を閉じた。

それきり、千夏を見ることもなく、立ち上がり歩いていってしまう。

何が起きたのか理解できずに見つめている千夏を気にすることもなく、

そのまま自動ドアを出て行った。

「帰っちゃった……」


口も利いてもらえなかった。


ここが図書館だということは分かっていたが

俯くと、堪えていた涙が溢れて止まらなかった。