それからの私は、人を信じることすら恐怖を覚え、投げやりになった。人に裏切られるなら、先に裏切ってやろうとさえ思った。そして、次々に彼氏を変え、二股も平気でかけた。相手が自分を愛する気持ちより、自分は相手を愛してはいけないと云い聞かせながら。

 流行の服と同じように、彼氏を変えていたのだが、そんな時、付き合う彼氏を美久に合わせる度、ちょっかいを出された。その彼氏達が云うには、美久は私にライバル意識があるらしい。でも美久と二人でいる時、男性が絡んでいない時などは美久と一緒にいると楽しかった。だから私は友達関係をやめようとはしなかったのである。

 彼氏が出来て、裏切り裏切られ、そんなことを繰り返しているうちに、私の心はどれほど荒んでいたのだろうか。

 そんな過去をぼんやり振り返っていると、和哉が思いがけないことを云った。

「そういえば、始めて結麻に逢った時、ふと見ると寂しげな表情をしている時があって、あれ? って思ってると、急に笑ったりしてたよね。俺思ったんだけど、結麻は明るく振舞っているけど、本当は今まで色々辛いことあったんじゃないかなってさ。考え過ぎかな。もしそうなら少しでも傷を癒やしてあげたいと思うんだ」

 私は言葉に詰まり、首を横に振った。
 和哉の云ったことは図星だったから。

 精一杯強がっている私に気付いた人は始めてだったし、それが本当に嬉しくて、胸が一杯になった。けれども、涙を堪える癖がついている私は決して泣かなかった。和哉とずっと一緒にいたいって心からそう思えたのに、素直に泣くことはどうしても出来なかった。


「大丈夫だよ。これからはずっと一緒にいよう」


 そう云った和哉の笑顔が私には眩しかった。

 それからはお互いのことをたくさん話し、そして笑った。