カラオケ店は大輔と行くカラオケ店ではなく、高山台公園から三十分くらい歩いたところにあるため、遠いのだが、歩いている方が恥ずかしさが半減されて助かったと私は安堵していた。


「結麻ちゃんはまだ彼氏と付き合ってるの?」


 どうしよう。何か答えたくないな。ここで付き合っていると云えば、和哉が離れていきそうな気がするし……。
 私は咄嗟に嘘をつくことにした。


「もう別れたよ。和哉君は彼女いるの?」


「いないよ。いたら、こうして結麻ちゃんと歩いてないよ」


 真面目なんだなぁ。私なんてまだ大輔と付き合ってるっていうのに、こうして和哉と会っている。


「和哉君ってもてそうだね」


 それは本心だった。端整な顔をしているし、色々な女性にちょっかいを出すようなタイプには見えなかったから。


「全然、俺は女性と話すの慣れてないし、どちらかといえば苦手だから。でも結麻ちゃんとは話しやすい。それに、もてるのは結麻ちゃんの方だよ。隼人が夢中になるのも分かる気がするし、今西も、結麻ちゃんのこと可愛いよなって云ってたから」


 和哉の云ったことは嬉しかった。でも、この頃の私は自分に自信があったから、天狗になっていたのかもしれない。


「そんなことないよ。美久の方が人気あるって」


「そうかなぁ。あっ、もう看板見えてきたね」


 和哉はカラオケ店の看板を見つけると指さした。

 どの曲歌おうかなぁ。和哉の歌早く聞きたいな。そんなことを考えながら、カラオケ店に到着した。
 幸い時間も時間なので、空いており、私と和哉はすぐ部屋に入れたのだった。