放課後の教室には、俺、池田、リカ、エミ、タカコ、そしてあまり乗り気ではない土偶の六人が集まった。

 俺が土偶を誘った時、『コックリさんはやらない方がいい』と頑なに断っていた土偶だったが、最終的に首を縦に振ったのは、もしかしたら友達が出来るかもしれないという気持ちが少なからずあったのだろう。

 
「土偶さぁ、マジ霊感あるなら、そんなとこ立ってないで座ってよね」


 気の強いリカが命令口調で土偶にそう云うと、窓際から教室の真ん中にある椅子にゆっくりと近づき腰を下ろした。

 その時、ふと土偶の横顔が俺の視界に入ったのだけれども、一瞬で背筋が凍りついた。土偶の口が少し持ち上がり、薄笑いを浮かべているように見えたからである。椅子に座った土偶の横顔をもう一度覗いてみたが、いつもの表情だった。気のせいか?


 
「こっくりさん、こっくりさん」


 そんなふうにこっくりさんを呼び出し、鳥居を書いた紙の上を十円玉が動くと、土偶以外の五人は歓声を上げた。

 十円玉に指を乗せているのは、土偶とリカとエミとタエコで、俺と池田は立ったままそれを見ている。


「ちょっと、土偶が動かしてるんじゃないでしょうね」


 リカが十円玉に指を乗せたまま、眉をひそめた。


「動かしてないよ。今ここには、コックリさんという名の低級霊が来てるだけ」


 土偶が低い声でそう云うと、リカは土偶から目を逸らし黙り込んだ。エミとタエコも微かに震えているように見える。池田は口が開いたままになっていた。

 土偶には分かるんだろうなと、俺だけが冷静だった。

 低級霊という言葉が土偶の口から出てからも、結局コックリさんを続け、色々な質問をし、十円玉が文字の上を動くと段々楽しくなってきていた。


「すげぇな。土偶が霊感あるおかげでコックリさんが動くんじゃね~の」


 池田がひと際大きい声で云う。


「ホントすご~い。だって私動かしてないもん」


「そうだよ。私も動かしてないし、リカだって動かしてないでしょ?」


 エミとタエコがリカに問うと、リカは黙って頷くだけだった。