「あたしの事も、ちゃんと名前で呼んで」 「え?」 「何か、好きじゃないの。“お前”って呼ばれるの」 「……」 初めて見たナツミの意思表示に、オレは少し戸惑った。 「第一、あたしはトシユキに言われて呼んでるのに。ズルいよ、そんなの」 ナツミはいつもと違う様子だった。 言葉の最後まで、ハッキリと聞き取れる声だ。