「先輩、それ……」
オレは、話の矛先(ほこさき)を変えようと、手にしていた台本を指さした。
「ああ、これ。今やってるドラマの台本」
「へーっ。先輩、プロになったんですか」
「ふふん。まぁね」
「凄いなぁ。いや、羨ましいなぁ」
話を余計な方向に振られない様に、オレは必死に取り繕った。
「ま、開始10分で死ぬ役だけどね」
「え……」
オレは少し、言葉に詰まってしまった。
「アンタ今、死体の役をバカにしたでしょ?」
「べ、別にバカにはしてない……」
「結構大変なんだかね、生きたまま死ぬのって! 呼吸は出来ないし、まばたきもNGなんだから!!」
「は、はぁ……」
「今度のヤツなんか、水中で全裸よ、全裸!!」
「あ、あの、先輩……」
「その後のヤツなんて……」
ピタッ
身振り手振りをつけて、必死に力説をしていた森本先輩の動きが、急に止まった。
「ふふん……」
「な、何ですか?」
そしてニマーッとした笑みを浮かべて、オレの事を見てきた。


