「今日は早く帰るから」 「はい。気をつけて」 ―――バタン… ――――あの旅行から、どことなく二人の間にぎこちない空気が流れている。 ふと、思い出すときがある。 恭平さんの腕の中を。 思い出……… ブルブルブルブルっ! 私は精一杯頭を振った。 まただ。 思い出すだけで心臓が痛い。 締め付けられるような苦しい痛み。 恭平さんがぎこちなく振る舞っているのではない。 ……原因は、私。 .