「ありがとう。いつか恩は必ず返すよ」
ジェイクはいやいや、と首を横に振った。
「礼には及ばないよ。俺はこういう非日常的なことが好きだからわくわくしてるんだ。気にするな」
そう言って、ラディアンの肩を軽く叩いて二階に上がっていった。
ナーベルはそれを見て首を傾げた。
「ジェイクもここで暮らすの?」
ラディアンはああ、と言いナーベルを見た。
「異変があれば知らせてくれる。助かるよ、ほんとに」
ナーベルは結婚するのに第三者が同じ家で暮らすのはどうかと思ったが、ラディアンと二人きりというのも緊張するので少しほっとした。
夜、寝る部屋もラディアンとナーベルは別々だった。
ナーベルはそれなりに覚悟していたが、ラディアンは部屋に案内したあと出ていったので拍子抜けした。
ラディアンは
「まだ結婚したわけじゃないから」
と言う。
「それに、ナーベルはまだ魔法について何も知らないから、まずはそれを勉強しないと。結婚するのはそれから」
そう言って部屋を出ていったラディアンに、ナーベルはなるほど、と納得した。