押し黙っている高遠くんに、私はまだ言葉を続ける。


「その気持ちよりもっと、きっと、強い気持ちはいつか来るから…」

「…そう…ですね」


力無く、高遠くんは笑った。


「………橘」

「あ、片桐…くん」


いきなり名前を呼ばれて、パッと後ろを向く。


「今日は一緒に帰ろう。だから、外で待っていてくれ」

「あ……」


片桐くんはそう言って、更衣室の方に足を進めていく。


“一緒に帰ろう”


「………片桐くん」


私は目をゴシゴシと力強く擦って、また片桐くんの方を見た。

そして……


「うん、待ってる」