14怪談

最後の14段目の段差に足を掛けると、誰かの足が見えた。





嫌だ。






顔をあげたくない。




しかし意に反して顔が跳ね上がった。






目の前に女の顔があった。







片方の眼球は骨が見えるほど深い穴があき、グジュグジュに膿んで異臭を放ち、もう片方の目には黒目がなかった。





唇はホッチキスで止められ、ところどころ腐食していた。




女は口をひらいた。



赤黒い唇をホッチキスの芯が引き裂いて、血が噴き出し僕の顔にかかった。




口腔内に、舌はほとんどなかった。




女は言った。







「おかえりなさいおかえりなさい成田公平君成田公平君おかえりなさい」