周りの人にあわててあやまって、ようやく落ちついた。ゴメンね…蓮也さん。




いや、彼は一人で笑いをこらえてただけなんだけどね。




でも、よかった。元気出たみたい。




落ちついたところで、あらためて蓮也さんが話しだす。




「声優になりたい…、か」




さっきまでのちょとさびしげな蓮也さんは消えて、一人の有名声優としての彼がもどってきた。




「はい! そのために、友達と声の、演技のやり取りをして、ちょっとでも演じることを学ぼう! って思ってます」




「高校生だろ…だったら演劇部に入るとか、放送部に入るとか…いろいろあるけど、まあ、なんでも物怖じせずに経験するのが一番だな。なにが声優に、人生に役立つかなんて誰にもわかんないから。オレなんか高校時代はずっとギター弾いてただけだぜ。自分の声よりも、ギターの音の方が本当のオレの心の声だって、本気で思ってたんだからな」




「きゃ~、うそうそ! どうりでロスチルで歌いながらギター弾いてる格好がすっごく様になってるわけですよね! へ~、蓮也さんもともとはボーカルじゃなかったんだあ! なんというレア情報! 萌え死ねます~!」




「まあ、今のメンバーはあとで社長がオレのために集めてくれた連中だからな…ありがたい話ではあるんだけど…」




またふっと、蓮也の顔がさびしさにかげる。今日の蓮也はいつも画面の中で見ている彼とは、ちがう。




いつもより近くて…。




なんだかもっと、好きになる。