ビックリした優一くんが後ずさりしたけど、気にしてられないよ。
「な、なに…?」
「声優になるにはどうしたらいいか、なにをやるべきなのか、わたしに教えてほしいんです!」
「教える…?」
「うん! 優一くんゲームやアニメにくわしいし、声優さんのこともよく知ってるから。だからわたしの声を聴いて、アドバイスしてほしいの!」
「…」
「ダメ…かなぁ」
そのあと優一くんは、わたしの目をじっと見つめながら考え込んでいた。
10秒なのか…1分なのか…とにかく彼の目がわたしの頭の中をさぐるように動いてて、いろんなことを考えているようだった。
そして彼は、ゆっくりと、力強い声で言ってくれた。
「桜木さんがどれほど本気なのか、どれほどやる気があるのか、ぼくにはまだわからない
でも、これだけは言える。桜木さんがぼくにそういってくれたことが、すごくうれしい
誰かのために何かできるかもしれないって、こんなにうれしい気持ちになれるんだって、はじめて知ったよ。
…ありがとう。二人でがんばろうね」
その声を聞いたら、わたし泣きたくなっちゃった。
自分でも、声優になりたいっていうどこかぼんやりとした気持ちが、グッと現実味のある目標になった。
「でも、ぼくきびしいからね?」
「の、のぞむとこです!」
って、ガッツポーズで応えた。
「うん、あの…とりあえず少し離れてくれるかな…」
「え…あっ!ごめん!!」
やだ、わたしずっと四つんばいで迫ってた…胸元けっこうあいてるのに…。