その番組がこの節目の年に新しい挑戦を行った。




不動の4人のレギュラーにあたらしい5人目を加えるというのだ。




人間の、ふつうの女の子を。




この『みちのけものたち』は、ヨーロッパでは主に悪役として描かれている怪物たちが、平和を求めて山間のちいさな谷間に自分たちの理想郷を作るっていうお話。原作の絵本は子ども向けだけど、わたしも読んでたけどけっこうこわい絵だ。それを原作者の人から許可をもらった日本のスタッフがもうすこし子ども向けに姿をアレンジして、人形劇として放送した。




これが大ヒットとなり、原作の絵本に描いていないオリジナルエピソードも交えて、いまもつづく長寿番組となった。




そんなすごい番組に出られるかもしれないのだ。




日本中の、声優を目指す人たちがいっせいに色めき立った。わたしもその一人だったが、まさかそんな、まだ学校通いのわたしなんか選ばれるわけないよ、と思いつつ応募したら、なんとあれよあれよと第一次~第四次審査も通ってこの最終選考まで来てしまったのだ。




(なれるかも…『みちのけものたち』の一員に…!)




その興奮は、日をおうごとににわたしを勇気づけた。毎日のレッスンでも、ふだんの生活でも、とにかく自分の生きる中心がこれになった。




毎日のきびしいレッスンも、やりがいがあった。「これに受かることために、がんばる」




このオーデションに受かることが、わたしの人生の目標になったのだ。




…ううん、受かるだけじゃあ、ものたりない。




絵本を全部買って何度も読んだ。いままで放送されたDVDも全部借りて観た。そして、想いを強くした。




この『みちのけものたち』の…仲間になりたい!! この子になりたい! ここで…生きたい! …と。