ハイぃいいい?! 今なんと?!
「ああ、大丈夫。ケイちゃん俺のダチだから。なんでも知ってるし」
「はじめまして、監督の藤森啓一(ふじもりけいいち)です」
ぺこり、とお辞儀をされる。蓮也さんと同じ年くらい? ちょっと小太りで、愛嬌のある人だ。
「あ、あ、あの、は、はじめまして、蓮也さんの…か、かか、か、かかっかかかか、かかかのじょ、彼女の、桜木陽菜です…です」
「…ケイの前でだけ、だからな、他の人の前では、他人のフリしろよ」
こっそりと耳打ちする蓮也さん。わ、わかってます…ていうか、そんなに耳にささやかれたら、ぽわ~ってなっちゃいますよぉ…。
「まだ撮影かかりそうだけど、がんばれよ。じゃあな」
そうささやくと、カプッとわたしの耳たぶをかじる蓮也さん。
「ひぃぃいいいぃいいいっ!!!!!」
思わず大声を上げるわたし。周りにいたスタッフさんたちがみんなこっちを見る。
「あ、いえ、あ、なんでもありません…ちょと、虫が、いたもので、驚いただけです…スイマセンっ!!」
恥ずかしくて小ちゃくなったわたしを、蓮也さんってばいつの間にあんなに離れたのか、遠くから見て笑ってた。
くぅうう…蓮也さんのいじわる~。そんなかわいいイタズラしちゃって…怒れない! ていうか、もう! ますますかわいいゾ!