遊園地からの帰り道、繁華街をとおったわたしの耳に聴きなれた歌声が聞こえてきた。




「れん、や…さん…」




なんで今…ここで…?




そう思いながらも、蓮也さんの声を探してしまう。街頭テレビが蓮也さんの姿をうつしだす。近くにいた女子高生たちが蓮也さんに声をあげる。




曲がバックで流れながら、蓮也さんのインタビューがはじまった。




その姿に、その声に、わたしの心がざわつきだした。テレビにうつる蓮也さんがにじんで、ゆらいだ。ゆるんだ涙腺がふたたびこわれて、ほほに、涙が伝うのがわかった。




蓮也さん…蓮也さん…っ。




思わず声に出してしまいそうだった。一瞬で、わたしのぜんぶが蓮也さんに向いてしまう。




となりで、優一くんがどんな顔しているか、見れない。




彼はなにも言わなかった。




優一くんがいなかったら、思いきり泣いていたかもしれない。でも、今はとなりに優一くんがいる。わたしはうつむいたまま、足早に歩き出した。自分の足音で、その声を消すように…消えるわけ、ないのに。




蓮也さんの声がとおくなっていっても、わたしの耳には彼の声がのこっている。甘く、ささやくようにわたしの名前を呼ぶ声が…。




プレゼントの入った、バッグが重い。




優一くんからもらったプレゼントと、蓮也さんに渡すはずのプレゼント。二つのプレゼントに込められたいろんな想いがどんどん重くなっていく。




バッグをにぎる指に力が入りすぎていて、白くなる。強くにぎっていないと、想いごと、落としてしまいそうだ。




どうしようもなく、心が冷たくなる。




このときのわたしたちは、お互いにかける言葉を、まだ知らなかった。