ある所に、周りから一目おかれている可愛らしい女がいました。


その女の名は、結城 華楠。


不安げに瞳を濡らしながら辺りをキョロキョロと見渡す華楠は誰から見ても可愛く、守りたくなると言われそうな、女としては憧れの容姿を持っていた。

何度も目撃されている可愛らしい顔、艶やかで柔らかい黒髪、花柄のワンピース、不安げな瞳、淡い薫り、鈴のような声。


…そう、華楠こそがあの五人を惑わした魅惑の女だった。


華楠は探していた人物を見つけたのか、パッと明るい顔になった。

ハンカチがないため、指で涙を拭い、その人物に駆け寄った。


『由香ちゃんっ!
ゴメンなさい、迷っちゃって…!』

「華楠!
うわ、やっぱり可愛い!
絶対こっちの方が良いよ!」


由香と呼ばれた人物は、ボーイッシュな服を着ている活発そうな女だった。

由香は笑顔で遅れてきた華楠に抱き付いた。


『キャッ!
そ、そんな事ないよ!
全然、由香ちゃんの方が可愛いっ…!
それにこの格好なのは今日だけで、学校ではまた、元通り…!』

「ふぅん、勿体ないなあ。
じゃ、今日は可愛い華楠を私に独り占めさせてよね!」

『う、うん!
私も、今日は由香ちゃんを独り占めする…っ!』

「キャーッ!
もう、可愛いんだカラッ!
行くわよっ!」

『うんっ…!』


笑顔で幸せそうに電車に乗り込んだ華楠。



幸せな華楠に、何が待ち受けているのだろうか…。