「おかえりなさい、華楠」

『お母様…ただいま帰りました』


リビングに、クリーム色の長い髪を後ろで緩く縛った、柔らかい笑みを浮かべた華楠の母親が入ってきた。


「懐かしいお友達ですね、準備も出来ているので、食事にしましょう?
由香ちゃんもぜひ。
食いしん坊の悠希くんはもう察しているでしょう?」

「はい!
すげー良い匂いしてます、さっきから!」


キラキラと瞳を輝かせ、華楠の母親を急かす悠希。
八人で机を囲み、思い出話に花を咲かせて楽しい食事をとった。
一服した後に由香が家へ送られ、今は華楠の部屋で集まっている。
食事中に華楠が眼鏡をとることはなく、今でもかけたままだ。


「…あ、そういえば華楠はお風呂まだ入ってないよねぇ、入ってきたらー?」


僕たち待ってるし、と床に座って特大サイズのベッドに頭を預ける湊斗が言うと他の四人も頷いて同意を示す。


『あ…そうですね、じゃあ少し失礼します』


くつろいでいてくださいね、と部屋を去った華楠。
残された五人は、小さく溜息を着いた。



「…俺達の知らない所で華楠が苦しんでいたというのは、なんとも言えない、な」

「やはり壁は感じますし…」

「眼鏡も外してないしねぇ…」

「あの格好の華楠もそそられるけどな…」

「面白いけどな、あれも!
でもやっぱ、何にも縛られないで笑ってほしいよなー…」


たまにいい事いうよな、の視線を感じて頭をかいて照れ臭そうに笑うが、褒めてねーよ、の視線には気付かない悠希であった。