その頃―…


「良かったのかい?
華楠ちゃんに言わなくて…」

「あぁ、全て華楠のためだ」

「…親バカが変な方向に行ってるの自覚してるのかな」


三ノ輪男子高等学園理事長室に、男性二人の姿があった。
片方はダンディーな…お馴染み、成澤学園理事長。
そしてもう一方はスーツをビシッと着こなした、三ノ輪学園の学園長、華楠の父である。


「…別に、あの事件は君のせいじゃないだろう?」

「だが、防ごうと思えば出来た事だ。
色々な意味であの子は特殊なんだ、もう少し気をつけていればあの子はもっとのびのびと…」


話している途中に、学園長はハッとしたように言葉を止め、手を額に当てて溜息を着いた。


「過ぎたことは良いだろう…
あの五人は既に華楠と接触したのか?」

「するようにしたさ。
にしても、君がわざわざ五人を送り込んで来るなんて思わなかったよ。
あの五人の誰かに、華楠ちゃんをお嫁に出すつもりなんだね?」


呆れたようにそう聞いた理事長に学園長は目を丸くした。


「何を言っているんだお前は?
あいつらに華楠をくれてやるわけないだろう」

「は?
あの話し覚えてるよね、キング候補の五人のナイト。
華楠ちゃんがクイーンで…」

「覚えているが…
それと嫁と、何の関係がある。
あいつらは、今ネガティブな感情の強い華楠が昔の感覚を思い出す手掛かりになるだろうと思い…」


困惑の表情の学園長に、理事長は腹の底からの溜息を着いた。


「…君って本当馬鹿だよね。
あの五人、華楠ちゃんのこと好きだと思うんだけど、ただそれの手伝い…だよね」

「な、なにを…
あいつら、そんな話し一言も…!
ハッ、学園では眼鏡も外せないだろうと思いしたことも、華楠を嫁に出す手助けに…!?」

「えぇ、まだ何かしてるの?
やだなぁ、僕の所にお嫁に欲しいのに…」

「何が嬉しくて娘を同級生の嫁にやらないといけないんだ!
くそ、何か手を打たないと…」

「こっちの台詞だよ、うちの子達が完全に不利になりそうだね…」