華楠は理事長室を出た後、静かな廊下を歩いていた。



――ドンッ

『キャッ!』

「っ!」


と、角を曲がったところで人にぶつかりよろけた…が、相手が咄嗟に手を回したおかけで倒れなかった。

その代わり、相手に抱き締められるような形になってしまった。



「あっぶ…ないなぁ。
大丈夫かい?」


助けた相手は、帝。
外で頭を冷やし、戻る途中だったようだ。


『あ…はい、申し訳ありません。
助かりました、有難うございました。』


華楠は直ぐに離れた。


「いや、怪我はない?」


『はい、おかげさまで。
有難うございました。
ではこれで。』


華楠は軽く頭を下げ、その場を離れた。



「…俺が抱き締めたのに反応しないとは、変な女だな。
その前に見た目もどうかと思うが。」


帝は独り言のように小さく呟き、理事長室へ向かった。