前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



一度は起こした上体をまた折って俺の首筋に顔を埋めてくる。

長い髪がチクチクしてくすぐったい、かと思えば、小さな痛みが首筋に走った。

皮膚を思いっ切り吸われたのは分かるけど、先輩はナニを……ちょっと待てよ。


今吸ったよな。俺の肌。


ってことは、まさかっ、先輩!


「せ、先輩。まさか! ッイタ!」


また吸われた。

さっき吸われた場所とは別の場所をチュッと、リップ音を立てながら。


これはもしかしてもしかしなくともキスマークの痕を付けられている。


しかも制服じゃ隠し切れない場所に!


幾つも痕を付けてくるものだから俺は焦った。


「先輩、止めて下さい」


俺は必死で身を捩るけど、暴れる俺の手を掴んで先輩はニヤリ。


「これも仕置き」

「これも仕置きって! 俺、頑張ってキスしたじゃないっすか! それで仕置きはおしまいなんじゃ」

「おしまいとは言っていない。ま、キスはキス。これはこれ。じゃ、イタダキマス」


「イタダカナイで下さい! ッ、イタッ! また付けたっすね!」


数日は消えないじゃないか! どうしてくれるんっすか……ん? もしかして俺、テイソウのキキ?

えええっ?!

じゃ、今の頑張ったキスってナニ?

選択肢の意味無いんだけどっ!


「無理っす!」


俺は先輩を押し返そうと躍起になる。


だけど……クソッ、さっきの濃厚過ぎるディープキスのせいであんま力が入らない。

早く抵抗しないと食われる。

俺、食われちまうって。


こんな誰でも来そうな保健室でヤれるわけないだろ。


じゃあ別の場所でできるかって聞かれたら、そりゃNOなんだけどさ。

俺的にはまだまだ清い関係を保ち続けたい。


男の子の方が性欲どうたらこうたら~言われるけど、皆が皆そうじゃないと思うぞ!


力なくジタバタ暴れている俺を捻じ伏せながら(まだ体に力が入らない)、鈴理先輩はベッドの上に放り出されている例のケータイ小説本を手に取って音読し始める。


「『期待しているんだろ? わーってる。すぐやっちまうから』」

「何言い出すんっすか」


度肝を抜く俺に鈴理先輩は可愛らしくウィンクした。その可愛らしさが今は小憎たらしい。