アッツーくケータイ小説を語っている先輩に俺は遠目で微笑。
「……いや軽くは見てないっすよ? ただ先輩の読ませてくれるところは官能場面ばかりなので必然とそう思わざる得ないという」
「それはあたしがシたいからだ」
なんてとんでもない気持ちを素直にさらっと吐き出してくれるんだ。
それ、お嬢様が間違ったって言って良い台詞じゃないぞ。
グッと握り拳を作って先輩は熱を入れて語り出す。
「実を言うとな、空。あんたの体を受け止めて泣き顔を見た時、とてもムラムラきたのだよ」
「……は?」
え、なんてこと言ってくれるの。この人。
「空の泣き顔があそこまでそそるとは思わなかったのだよ。果敢にも堪えたあたしを褒めて欲しい。かなり葛藤したのだぞ。
『据え膳食わぬは男の恥』という言葉があるだろ? まあ、あたしの場合は『据え膳食わぬは女の恥』だが……とにかく空のあの顔はやばい。これはあたしに食って下さい、と無意識に空から誘っていた」
「ご、ご都合な解釈も程ほどにして下さいっす! 人が恐怖して泣いている間に、そんなことを考えていたんっすか!」
「仕方がないではないか。あんたの泣き顔があたしを誘うのだから」
誘ってねぇよ先輩。
あの時の俺は、先輩との甘い雰囲気を味わっていたんだぞ。
恐怖心に煽られながらも、先輩のヒーローな部分とヒロインな部分にときめいて、もっと彼女を知りたいと思っていたというのに。
先輩は俺の泣き顔を見てケッタイなことを思っていたんっすね。
頭上に雨雲を作り、ズーンと落ち込んでしまう。
お構いなしに鈴理先輩がトントンと肩を突っついてきた。
意地の悪さを含んだニッコリ笑顔と、己の唇を指して今か今かとキスを待つ肉食獣。草食は追い詰められた!
どうする、先輩にこの場で食われちまうか。
それとも俺から先輩にキスするか……そんなの、頭を悩ます問題でもない。
どちらを選ぶかなんて分かっている。分かり切っているよ。
だけどさ、羞恥が先に来るんだよ。分かるだろ、俺の気持ち。ええい男になれ、お・れ!
「じゃ、じゃあ目を瞑って下さい」
人にちゅーなどしたことない俺は相手に慈悲を求めた。
それくらいのハンデはあったっていいだろう? 俺は恋愛初心者なんだ。先輩みたいな肉食系でもないし、さ。



