あ、押されている。
親衛隊が押されている。
「第一あたしが選んだ男を何故、あんた達は見極めなければならん。あたしにケチをつける気か?」
空の何が不服だと腕を組む鈴理先輩。
不機嫌に携帯を返せと命じるあたし様に、柳先輩は何度も頭を下げて使用許可を求めた。
「自分達は貴方を崇拝しているのです」
気持ちを落ち着かせるためにも、携帯を使用させて欲しい。悪用はしないと懇願。
目をうるうるとさせて鈴理先輩の心に訴えると、彼女の良心が疼いたのだろう。
仕方がないと許可を下ろした。
「ただし。空を傷付けることは許さん」
それをした時点でアウトだと彼女は唸った。
それによって歓喜の表情を浮かべる親衛隊隊長は俺をチラ見。
舌を出してザマァと中指を立ててきた。
な、なんて嫌な先輩でっしゃろう。
「移動するからついて来てくれ」
善は急げとばかりに、柳先輩が早足で俺達を誘導する。
言われるがままに彼の背を追うと、その後を親衛隊がぞろぞろと追う。
まるで光景は蟻の行列だ。
傍から見たら妙な光景極まりないだろう。
さて、体調に連れて来られたのは体育館裏からさほど離れていない倉庫。
正確には体育館裏の古びた倉庫。
その倉庫は俺が先輩と付き合うって決めた日に入ったあの倉庫だ。
危うくアブノーマルなセックスをされそうになった場所でもある。はは、イイオモイデネ。
「豊福空。君は木登りをできるかい?」
足を止めて顧みた柳先輩が質問を投げてくる。
「え? い……一応できるっすけど」
あんまりしたくはないんだけどさ。
顔を渋る俺を盗み見た柳先輩は細く笑い、嫌味ったらしく説明を始めた。
「だったら簡単な試練かもしれないな。ほら、あそこに木が見えるだろ?」
柳先輩は倉庫の隣に生えている一本の太い木を指差した。
「あそこに木があるな? あそこの木から倉庫の屋根に飛び移って反対側の木にぶら下げている携帯の入った巾着袋を、私達の前で取って来て欲しい。幸い倉庫の屋根は狭いながらも平らだから足元を滑らせて落ちるということもないだろう」
「なんだ。試すというから凄いことをするかと思えば……なんてことないこと試練だな。要は木に登って倉庫の屋根に飛び移り、反対側の木に下がっている巾着袋を取れば良いのだろ?」



