前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



で、でも頑張れ俺!


アジくんに言われただろ。


俺は悪いこといしてない。

俺と先輩で決めて恋人同士になったんだ。

他人にどうこう言われても堂々としてれば良いんだ。


ううっ……だけど二人プラス、他の親衛隊隊員の皆様方の眼が恐い。痛い。重い。


さすがに一対十数人じゃ堂々としてられないよなぁ。こっわー。


ええい勇気を出せ、預かられた携帯を返してもらわないと! ……俺、ある意味盗難の被害に遭ったんじゃ? なんで被害者がビクビクしているんだ。


携帯を返して下さい。

その台詞が口から出る前に、柳先輩からビシッと指差された。


「一年C組豊福空! なんて君は卑怯者なんだ! 私は君を心から失望したぞ!」

「……はい?」


ううん? なんで卑怯者呼ばわりされるんだ。

盗難被害に遭ったのは俺なのに。


首を傾げる俺に対し、柳先輩の台詞に便乗して高間先輩も卑怯だと繰り返した。


「こちらは君ひとりを呼び出した! なのにまさか、まさか、鈴理さままで連れて来るとは! 卑怯で根性なし! それとも此方にイッチャ~なところを見せ付けて嫌がらせでもぶつけているつもりか!」

「ええぇー……そう言われても」


俺はポケットに折り畳んでいた手紙を取り出し、急いで広げた。


「この手紙、どこにも俺一人で来いなんて書いてないっすよ? それに鈴理先輩の名前が使われていますし」

「またそんな嘘を!」


「空が嘘をつくものか。あたしも読んだぞ。あたしはこんな乙女チックなこと書かん」


「す、鈴理さままでっ……嗚呼、隊長。泣きたいですぅうう! 愛しの鈴理さまがあいつの肩を持ちましたぁああ!」

「気持ちは痛いほど分かるぞ! 私の胸で泣け、高間!」


涙ぐむ隊長と号泣する副隊長の熱い抱擁。


それだけでも俺と鈴理先輩はドン引きのドン引きなのに、「現実は残酷ですぅう!」と副隊長。「強くなれ、高間!」と隊長。


二人の交わす慰め合いの言葉に肌が粟立った。

なんってむさ苦しいんだ。暑苦しいんだ。

向こうに立っている親衛隊隊員もオイオイシクシク泣いている……帰りたいな、切に。