前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



「ほぉー。空。モテモテだな。いや何、あたしは寛大だからな。男にしがみ付かれてどうこう言う心の狭い女ではない。まあ、少々ながらも仕置きをしなければいけないようだが。あんたが誰の所有物かってのをねぇ」


それとも仕置きされたいがためにワザと、か?


ニッタァと意地の悪い笑みを浮かべて何処からとも無くロープを取り出す先輩に俺はギョッと目を削いだ。


これはちょ、不味い展開な気がするんだけど。


しかもそのロープはナニをする時に縛るためのロープだったような。


次の瞬間、疾風の如く先輩は俺の体をフライト兄弟から引っ張り出すと、足払いして俺に尻餅をつかせる。んでもってロープで縛った。

「よし」

ギュッと固くロープを結ぶ先輩は晴れ晴れとした顔を作っている。

対照的に俺は冷汗ダラダラ。


い、一瞬の間に縛られッ、しかも解けないときた!

どんなに身を捩っても解けないッ……ピーンチ、俺、大ピーンチ!


「先輩っ、これにはワケがあるんです。別に俺はモテていないです! フライト兄弟は俺を止めようとしてたんっす!」

「話はじっくり体で聞いてやる。今日という今日は勘弁しないからな」


鼻歌交じりにロープを引っ張って俺を引き摺り始める先輩に、


「行くところがあるんっす!」


俺は必死で弁解。



鈴理先輩は聞く耳を持っちゃくれない。

フンフンフ~ンと鼻歌を歌いながら俺を何処かに連れて行こうとしている。

多分人気の無い空き教室だとは思う。


嗚呼、俺、今日で必死に守っていた貞操が……とか思っている場合じゃない。


「先輩ぃい!」


懇願に近い声で呼んでも先輩は無視。


ああもう! 俺はフライト兄弟に助けを求めた。


呆気に取られているフライト兄弟だったけど、さすがに不憫だと思ってくれたのか、エビくんが鈴理先輩を呼び止めた。


足を止めて振り返る鈴理先輩にエビくんは持っていた例の手紙を彼女に差し出す。


「空くんは体育館裏に行こうとしたんです。携帯を預かられたっぽくて」

「携帯を? 誰に?」


「えーっと……この手紙ではよく分からないのですが」