「貸して頂くっす。俺、バイトをし始めたら絶対に携帯を買いますから。そしたら真っ先に先輩に連絡を教えます」
「ああ。楽しみにしているよ」
笑う美人先輩に見惚れちまう。
だけど、それは単に先輩が美人だから見惚れたわけじゃない。先輩だから見惚れちまった。
ただの美人さんに微笑まれても俺は見惚れる程度だ。
きっと美人さんだけじゃこんなに胸や顔に熱が集まらない。
そう思うと俺はやっぱ先輩のこと少しならず意識をしているし、好いているのかもしれない。
先輩に気持ちを悟られたくなくて、貸してもらった携帯を開いてみた。
デジタル画面が俺に顔を出してくれる。
「へえ、携帯ってこうなっているんですね。でも先輩、これはどうやって電話を掛けるんですか? メールもどうやってやるのか俺にはサッパリです。自分、機械音痴なんですよ」
「ふふっ、そうなのか。スマートフォンと迷ったがガラゲーを渡して良かったな。貸してみろ、まずは電話の掛け方を教えてやるから。メールもじょじょに慣れていけば良い。しかし、今の時代はLINEだな」
「ならLINEから教えるか」先輩は俺の手から携帯を取って操作し始める。
俺はその手を覗き込み、操作を覚えようと頭に叩き込む。
ある程度、教えてもらったら自分で操作してみる。
けど先輩のように上手くできない。
LINEとやらのアプリを起動させるのにも苦労するし、スタンプを押そうとすると連続で押してしまう。
メールも件名に全部本文内容を打ち込んでいる始末! 絵文字や顔文字は俺にはまだまだ取り扱えないレベルだった。
私生活であんまり機械に接する機会がないせいか、こういう機器系には弱いんだ。
ゲームとか超弱いよ。格ゲーとか瞬殺だよ。超絶機械音痴。
先輩は失敗ばかりする俺を見て笑いながらも丁寧に教えてくれた。
笑われたことに羞恥を感じつつ、俺は今の時間が居心地良く思えた。
川島先輩から「らぶいねー」って茶化されて俺は赤面。先輩は当然と笑う。
なんだ普通に純愛……普通の恋愛できているじゃん。俺と先輩。
周囲と違っている面も沢山あるけどさ。
金持ちとか貧乏とか、そういった身分とか、容姿とか、そういうの関係無しに普通の恋愛ができている。
できているじゃんか、なあ?



