「君達も知ってのとおり、2年F組の竹之内鈴理さんが1年C組の豊福空という少年に前々からアタックをしていた。
可憐で淑やか、我等がアイドルの鈴理さんが何故に平々凡々の少年にアタックをしていたのかは謎だが、不思議ミステリーなのだが、我々は大きな危機感を抱いていた。彼女がアタックすることにより少年が靡くのではないかと。


竹之内鈴理さんの美貌は勿論、体躯、性格、すべてにおいてパーフェクトなのだ。靡かない男はいないのだ。


鈴理さんのアタックの仕方はまったくもってこちらが仰天するような、そして羨ましい限りのアタック法。

あの少年にキスをしたと情報を入手した日にはあまりのショックに暗転してしまったものだ。


毎日のように追い駆け回されている少年の代わりになれたら、と指を銜えたものだ。



なあ、同志達よ……。


とにもかくにも鈴理さんのアタック法に我々は焦っていた。

いつあの少年が靡いてしまうのか、アタックを受け入れてしまうのかと、肝を冷や冷やさせていた。


そしてついに、恐れていたことが起こってしまった!


あろうことか二人が付き合い始めてしまったのだ! 嗚呼、なんたることだ! 最初はまたでたらめな噂だと高を括っていたが……副隊長が確証してしまう情報を入手してきた。そうだろ? 高間」


「イエス、隊長。僕は見てしまいました。先程、二人が意識をし合ってキスをしていたところを。あれほど嫌がる素振りを見せていた少年が受け入れていたのですよ! うわああぁあ隊長ぉおおおお」


高間と呼ばれた男子生徒は椅子を倒し、両手を広げて隊長に飛びつく。隊長はそれを受け止め、号泣。


「泣くな、高間。お前の気持ち、痛いほど分かる。分かるぞ!」


隊長と副隊長の熱い抱擁。見ていてむさ苦しいことこの上ないが、教室にいる者達はそれを見て感涙しているため、誰も止める者などいなかった。

ここにいる集団は皆、むさ苦しいのかもしれない。

グッスンと涙ぐみ、高間副隊長を解放すると隊長は「こうしてはいられない!」と声音を張った。