「お、俺しないっすよぉおおお?! なんっすか、そのロープ!」
「無論、縛るためだ」
何を縛るかなんて聞かない。聞かないぞ。想像してたまるか。
「タオルに蝋燭に小瓶は一体全体なんっすか!」
「これは人呼んで『鬼畜セット』と名が付いている。つまり普通ではないセックスを堪能するための道具だ。
例えばこのタオルは目隠しというプレイを楽しむためのもの。こっちの蝋燭は所謂SMプレイというものを楽しむためのもの。小瓶はー……使ってみれば分かる。空、小瓶の中身を知りたいならば、早速使ってみるか?」
「せんぱあぁあああいまだ死にたくないっす! 俺が好きだと仰るなら、どうぞ思い止まって下さい!」
「愛は様々な形を持つぞ空。これもあたしの一つの愛の形だ。大人しく有り難く愛を受け取れ」
ビーンとロープを張って俺を見下ろす肉食系攻撃型女子がニヒルチックに笑ってきた。
さっき、俺は先輩から理由を付けて逃げないと心に決めた。
決めたよ。それを撤回するつもりはない。
でもさ……時に理由を付けて逃げないといけない事情っていうのもあると思うんだ!
如何なる理由があろうとも、これだけは断固死守しなければ!
貞操だけは絶対守り抜く!
俺は引き攣り笑いを浮かべながら、ゆっくり上体を起こすと先輩を抱き締めた。
「およ?」
間の抜けた声を上げて驚く先輩の隙を付いて、俺は素早く先輩の下から抜け出した。
「なんと!」
逃げられたと悔しがる先輩に、俺は乱れたシャツのボタンを留めながらニッコリ愛想笑い。