もう無理、限界だって言っているのにこの人くさ!
息が続かない、ほんうと苦しいから!
なんか感覚がなくなってきたよ。
足元がフワフワしてきた。
酸欠で失神しそう。
何が起きているのか状況判断さえ危うくなってきた。
ようやく先輩から解放された時には、息も絶え絶え。
酸欠で思考がまったく回ってない。ゼェゼェ息をついている俺に対し、先輩はケロッとしている。
何なんだこの人、テクニシャンか? テクニシャンなのか? くっそう、なんか悔しいぞ。
見下ろす鈴理先輩は俺に一笑。
「今日から空は正式にあたしの所有物だな。ああ、恋人とも言うな」
「はぁっ……はぁ。是非とも恋人でお願いしますっす。あー息が……先輩、俺が苦しがっているのに気付いて……ワザと深くしたでしょ?」
問い掛けに鈴理先輩はニヤリ。
「好きなヤツほど苛めたいというではないか。ケータイ小説でいうと、そうだな、『ドS』という分類の気持ちに属すると思う。今のあたしはドS女だな。どうだ? ときめいたか?」
「なるわけないっす……ふ、普通に恋愛しましょーよー。ほんと、死ぬかと」
「そういう顔をされるから、攻め女は止められないんだ。やはりあたしは男にされるのではなく、あらやっだぁその他諸々のことをしてやりたいんだ!」
ぐったりとマットに沈む俺に大喜びしている鈴理先輩。
大丈夫なのかな、この人と付き合っても。
前途多難(次いで災難)な恋愛になりそうで怖いんだけど。
俺は初っ端から先行きに不安を感じていた。
溜息をついて、そろそろ先輩に退いてもらおうと上体を起こす。否、上体が起こせなかった。
先輩が目を輝かせながら、俺の顔の真横に何やら道具を広げている。
どこから出したんだよ。
ロープやら、タオルやら、蝋燭やら、怪しげな小瓶やら……ちょっと待て。
「せ、先輩。それはなんっすか?」
「恋人になった記念に、記憶に残るような情事をしようと思ってな。
ホラ、お互い恋人になったんだ。もう遠慮はイラナイだろ? 空も言っていたではないか。恋人同士ではヤれないと」
そういう目的で恋人になったんじゃないんだけど。
俺はお互いを知るために、お付き合いしましょう、その意味合いで恋人になったんだけど!



