「彼氏にはなれても、先輩の求めるカノジョになれる自信はないっすよ。キャッ、先輩、ここじゃ駄目だよ! あーれー……みたいな、べらぼうなヒロインになれる自信はないっす。一抹もないっす。だけど」
まるで何もかも俺の気持ちを見透かしたかのような双眸が、期待を寄せて言葉を待っている。
「強引な貴方に意識しているのも確かなんです。だから、まずはお付き合い。お互いを知るためにお付き合い、そういうのでもありっすか?
変わり者の貴方をもっと知りたいと同時に、俺自身の気持ちも知りたいんです」
アジくんは俺にこう助言した。
『お互いが恋に落ちて恋人、だけが恋愛じゃないだろ? 色んな恋愛があってこそ、恋愛って面白いと思うぜ』
理由を付けて逃げていないで、まずは自分の気持ちを知るために付き合うってのも有り。
そうアジくんは助言してくれた。
だから鈴理先輩に提案する。
お互いを知るためと気持ちを知るためのお付き合いから始めませんか? って。
鈴理先輩からしちゃ卑怯な案かもしれない。
こんなにもアピールをしているのにこの期に及んで、付き合いに尻込みするか、と。
分かっている。
先輩にとっちゃ嫌な提案だってこと。
でもこれが先輩に対して出来る、俺の精一杯。
意識は芽生え始めているけど、どれだけ先輩が好きか俺自身分かっちゃないのに、こういう男女の営みは駄目だって思うんだ。
後々お互いが傷付くかもしれない。
特に先輩は女性だ。
男の俺より、情事後のことで色々気遣うだろうし、仮に辛い目に遭うとしたら先輩だ。
学生のうちから若気の至りを経験しなくともいいとは思うけど、もしもそういう場面に出くわすなら、やっぱり気持ちが通じ合った合意の上が良いと思う。
「それじゃ駄目っすかね?」
おずおずと先輩に意見を求める。
俺の言葉に呆気に取られていた先輩だったけど、見る見るうちに笑顔を零す。
破顔する先輩は年齢相応の女子の顔だった。



