前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



声を窄めて悲しそうな声を出されたら俺も、ちょっと良心が痛む。

別に俺は先輩のことが嫌いじゃない。

先輩のやらかしてくれる問題行動が本当に嫌なら、全力で拒絶しているよ。

全力で嫌悪感を出している。


それが出来ないのは少しならず、先輩に気があるからで。

「嫌いじゃないっす」

気付けば、口が動いていた。


「嫌いとかそういう問題じゃなくて。順序っていうのがあると思います。俺は身分とか、身形とかで、何かと先輩から逃げていましたけど。
あ、積極的なアプローチで逃げたのは仕方が無いと思って下さい。あれは先輩が積極的です。過ぎるのが悪いっす」


でも先輩の気持ちは伝わっている。

俺は色んなことから先輩から理由を付けて逃げていたけれど、意識していないわけではない。


あんなにアプローチをされたら、意識せざるを得ないんだ。


雄々しい攻め方をする彼女は本当に”俺様”のようなやり口で俺を落とそうとしている。

傲慢で、勝手で、周囲の迷惑を顧みずに俺を好きだと言う。しかも女扱いにして人の矜持を砕いてしまう。

良くも悪くも意識してしまうじゃないか。


「先輩が上級生から告白されたと聞いて動揺した俺がいました。貴方から逃げてばかりなのに、どこかで取られたくないと思ったんですよ。我儘にも……あーあ、先輩は俺を彼氏にしたいんですか?」

「名目は彼氏。だが、あたしが欲しいのはカノジョなんだ」


つまるところ彼女は、男女関係はそのままに本来立つべきポジションとは反対のポジションを手にしたいのだという。


「昔からそうなんだ」


恋愛小説や漫画を読むたびに、主人公(ヒーロー)に憧れを持つ先輩。

傍らのヒロインに魅力を感じず、常にヒロインを守る男ポジションに羨望を抱いていた。


それは変えられない気持ちだと鈴理先輩は語ってくれる。


カッコイイものに憧れを持っているのかもしれない。

自己分析する彼女に苦笑してしまう。


カッコイイものに憧れるなら、俺様や鬼畜は論外だろうに。


未だに腹の上に乗っている彼女を見つめ、その場しのぎに頭部を掻く。


「まずはお付き合いから、じゃ、駄目っすか?」


真ん丸お月さんのような目が驚愕をあらわにしている。俺は続けた。