前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



「馬鹿だな、空。あたしはそれを楽しみにあんたを襲おうとしているのだぞ」

笑顔で言う台詞じゃない。

犯罪めいた言葉だから、それ!


「無理っすよ!」


俺は絶対に無理だと先輩に訴える。
こんな可愛らしい言葉(艶めかしい台詞)を、俺が言えるわけないじゃないか。

こういう言葉は女性が言ってこそ魅力的に見える。聞こえる。

そう、女性の特権だと称すべき台詞。


俺には無理だ。絶対に無理だ。

言ったら最後、本人がゲロを吐く。おぇおぇ。


何度もかぶりを振って無理だと訴えている間にも、彼女が我が物顔で俺の上に乗っかってきた。

嬉々に満ちたその顔に見惚れる俺、がいるわけもなく、大焦りで先輩を宥める俺がいた。


「ちょ、先輩。落ち着きましょう! 早まっちゃあいけない。国のおっかさんが泣くっす。ついでにおっとさんも泣くっす!」

「おっとさんもおっかさんも泣かないが、空が今から鳴く。お? 今のはなかなかグッジョブな掛け合いじゃないか?」

「ゼンッゼングッジョブじゃないっすよぉお! ぎゃぁああボタンを外さないで下さい!」


カッターシャツのボタンを外しに掛かる先輩に俺は大パニック。

それさえウキウキと胸を躍らせている先輩がいるもんだからマジ、泣きたい!


あ、今、シャツの第一ボタンを外した。

気付いたら三番目まで外されている。

ギャー! ストップ暴走本能! 清く正しく誠実に生きましょう!


本能のままに生きてはいけない時もある!


さあ落ち着いて。理性を保って。此処は清らかに、穏便に、事を話し合いで済ませましょう。


だって俺達はお互いに未成年。若気の至りじゃ収拾つかない。

お互いにそういうアダルティーな世界を知るに早いお年頃。

世の中には知っている方々もいらっしゃるけど、俺達はまだ知らなくても良い。というか知るのが恐いです。


「せ、せ、先輩! 俺、責任取れないっす! 最悪退学になりますよ」

「安心しろ。あたしが責任取ってやるから」


ンまぁ、惚れてしまいそうな頼りがいのある台詞。じゃなくて。


「こ、こ、こ、こういうのはお互いのためにならないっす! まだ俺達恋人でもないっすよ!」

「言ったろう? 空に気持ちをちゃんと伝えてやる、と。空はあたしが嫌いか?」