【第一章 野獣降臨】
―先輩のバカ!①―
その時、私は油断していた。
体育館倉庫に用事があるからと先輩について行ったら、倉庫に入った瞬間、前触れも無しに先輩に押し倒された。
先輩は私をマットの上に押し倒すなり、こう言った。
「食らいてぇ」
「あ、キャ、や……ヤダ。先輩、こんなところで恥ずかしい」
あわわ、何処に手を入れているの! 先輩は先輩で止まらないし!
「知るか。俺のやりたいようにやる。お前は黙って流されればいいんだよ」
「お、横暴!」
「そういう舐めた口を利く悪い子には仕置きだ」
「やだぁ! 先輩の肉食ー!」
「鳴くことは許してやるよ。たっぷり鳴け」
(それからあれよあれよと流される主人公だった。まる)
うん、まあこれはあれだな。あれ。
なんていうか、そう、恋愛小説だな。
すごく過激的で非現実的な恋愛小説。
まず倉庫でナニをヤッているんだよ。
人が来ちまったらおしまいだろ。
いや、似たような状況に置かれている俺も人のことは言えないけど。
俺は自己完結するように一つ頷いて静かに本から目を放し、先輩を遠目で見つめた。
「先輩。つかぬ事をお聞きしますが、先輩って男のポジションに憧れているんっすよね」
「毎日のようにそう言っているではないか。男のポジションをぶんどる、それがあたしの夢の一つでもある」
当然と言わんばかりに腕を組むあたし様。俺は相槌を打つ。
「ですよねぇ。じゃあ、先輩に狙われている俺って必然的に女のポジションになるっす」
「そうだな。何か疑問でも?」
「疑問だらけですよ。先輩、この本のように『こんなところで恥ずかしい(キャッ!)』とか、『先輩なら何されても(ドキドキ)』とか俺に言って欲しいんっすか? 男の俺が言っても面白味も何もないでしょーに」
寧ろキショイと思うぞ。
俺がそんなこと言った日にはオカマの道に走るかもしれない。走った方がマシなような気もする。



