前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



そうこうしている内に鈴理先輩は体育館裏まで足を運んでいた。

正確には体育館裏の古びた倉庫前に足を運んでいた。

此処は古くなった用具を一時的に保管する場所なんだって。


まだエレガンス学院に入学して時がそう経ってないから分からないけど、先輩はよく学院のことを知っているようだ。

行儀が悪いことに先輩は引き戸式の倉庫の扉を足で開けた。


丁度、扉が開いていたんだ。

隙間が空いていたから、そこに足を引っ掛けて堂々と倉庫の扉を開けた。


まさか故意的に開けられていた? そんな気がしてならないんだけど。

用意されたように積み重ねられたマットがそこにあるんだ。絶対に下準備していただろ。ほんとに俺ピンチ!


「アイデ」


マットの上に落とされて俺は衝撃に顔を顰める。

しかし、そうもしていられない。

倉庫の扉を閉めちまった先輩が振り向き、最高に意地の悪い笑みを浮かべてきたのだから。


め、目が本気だ。

これはちょ、本当にやばいって。やばい。

貞操の危機なんて軽々しく口に出来るもんじゃないくらい、やばい。

俺は咄嗟に持っていた本を開いて、そっちに話題を持っていった。

「せ、先輩ってこういう恋愛小説が好きなんっすか? タイトルが肉食系俺様男子だなんて、なんかワイルドですね!」

どの角度から見ても、タイトルが物騒極まりないと思うのは俺だけだろうか。


「そうだ。とてもワイルドだ。そのワイルドさにあたしは憧れている。空、試しに24ページを読んでみろ」


24ページ? 凄いな、ページ数を覚えているなんて。それだけこの本が好きなんだな。


ページ数を言われて、俺はおもむろに24ページを開いて目で字列を追った。