前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



鈴理先輩の次の行動に硬直と赤面と思考停止。

だって今度は先輩が俺を横抱き、所謂お姫様抱っこをしてきたんだ。

あの先輩、俺、一応貴方様より身長も体重もあるんですけど、あるつもりなんですけど、何故に持てるんですか。怪力? 怪力の持ち主なんっすか。


リアル問題、男だって女の子を横抱きにしようにも相当な力がいる。


平均50キロだとしたら、抱っこするのにその重さを耐え抜かないといけない。

それどころか、持ち上げないといけない。

美人な女性が大の男を持ち上げる……これは問題ありの図だ。妄想的にも、現実的にも。


疑問を口に出していたみたいで、先輩はにこやかに答弁してくれた。


「これでも護身術が使えるまでに体は慣らしてあるんだ。財閥の娘というのも何かと習い事等々をさせられて大変なんだぞ。だから平均並みの腕力はある」

「平均、これが平均ですか?」


平均並みの腕力とは一体なんだろう。

まさかゴリラと比較しているわけじゃ……俺を持ち上げる先輩は本当に女の子だろうか。些か不安になってきた。

無言になると、不満に思ったらしく先輩が唇を尖らせた。


「いいじゃないか。攻め女の夢のひとつだぞ。お姫様抱っこ(する側)は。空はあたしの夢をリアルによって崩すつもりか?」

「まあ、できれば崩したい現実ではありますね」


どう現実的に考えても、人間が人間を横抱きにするというのは、それ相応の力が以下省略。


「戯け! とにかく、あたしはケータイ小説のような王子キャラになりたい。カッコイイヒーローになりたい。だからあんたを横抱きにする。それ以上も以下もない」


呆然としている俺を余所に、颯爽と先輩は何処かへ歩き出す。


「お、下ろしてください。何処へ行くんっすか!」

「空に気持ちが伝わる場所だ。そう、空の不安がなくなるまで気持ちが伝えられる場所に移動する。安心しろ、人目のつかない道を通るから。
本来なら人前で堂々と歩くのが王道なのだが、照れ屋な空のために人通りの少ない道を通ってやる」


嫌な予感。

もしかして先輩が向かう場所って、向かう場所って。