顔を皺くちゃにして、ギュッとベッドシーツを握り締める。
なんでそんなこと言うんだよ。
沢山困らせてきたじゃんか。
沢山世話になって、沢山愛してもらって、沢山傷付けたりもして。
実の息子じゃない、孤児の子を沢山助けてくれたじゃんか。
なのになんで。
我が儘とか、俺のことバッカ、おれのことばっか……。
病室に仕事帰りの父さんが入って来たことも気付かず、「俺のせいじゃんか」積もりに積もっていた気持ちを吐露する。
「今、父さん母さんが俺を引き取る羽目になったのも、両親が死んだことも、全部。あの時、俺がひとりで公園に行かなきゃ、誰も傷付かずに済んだ。二人が死ぬこともなかったし、父さん母さんが苦労することもなかったんだ。困らせるどころか、俺は……俺は……」
滴る感情の雫と交じる嗚咽。
やっと吐き出せたこの気持ち、たどたどしい自責の念を吐いて俺は膝を抱えた。
本当はこんな姿を親には見せたくはなかった。
向こうを困らせるだろうし、自責する息子なんて見たくないだろうから。
ああもうグチャグチャだ。
こんなことなら自分から切り出して、もっと落ち着いて両親と向き合えば良かった。
母さんが俺の名前を呼んでも、俺は癇癪起こした子供のように自分のせいだと言い張って、優しさを拒絶する。
高所恐怖症になったのは親を失ってしまった恐怖心と、自分の罪を認めたくない畏怖の念から。
現在進行形で高所が怖い俺は本当に馬鹿で畜生だ。
「空さん、そらさん――空」
何度も根気強く名前を呼ばれて、ようやく顔を上げる。
こっちを見つめてくる母さんは「やっと教えてくれましたね」泣き笑いして、なんでもっと困らせないのかと息子の額を叩いた。
ボロボロと泣きながら、鈍感な俺は気付く。
母さんはとっくに俺の記憶が戻っていることに気付いていたのだと。
そういや先輩、言っていたな。
自分でさえ分かったんだ。
両親は尚更、俺の変化に気付いているんじゃないか、と。
母さんは知っていて……でも黙って見守ってくれたんだ。
俺の気持ちに整理が付くまで、ずっとずっとそれこそ避け始めた理由を知っていても。
それなのに、俺はこの人を避けた。
怖くて逃げたんだ。十何年、親でいてくれた人から。



