息が切れても全力疾走、腹部が痛んでも以下同文、怪我の箇所が悲鳴を上げても以下同文。生き延びるために俺達は走る。
怪我のせいで脂汗が滲んでくる俺に対し、「おぶろうか?」まだ体力に余裕のある先輩が声を掛けてくる。
いやいやいや、冗談じゃないっす。
それじゃあ先輩に迷惑掛けるっすよ。
各々の足で逃げた方が追っ手からも距離が置けるだろうし。
枯れたような雑木林を抜けると道路に出た。
視界が悪いけど踏み心地からこれはアスファルト、確かに道路だ。
しめた、これを辿れば町に辿り着く筈……何キロ、何十キロ先になるか分からないけど、いつかは辿り着くだろう。
道は道だ、どこかの町には必ず繋がっている。
「ん、車の音が……」
道路に立つ彼女は後方を睨んだ。
ここらを通ってくれる親切な車がいるだろうか? いや、いるかもしれない。
だけど俺等を攫った誘拐犯達も車を使った。
と、いうことは救世主到来よりも、地獄の門番到来の方が可能性的に大。逃げろっ!
俺達は再び雑木林の中に逃げた。
足で逃げる俺等に対し、向こうは車、どちらが有利かなんて謂わずもだろう。
俺達の姿を捉えたのか、道路を走っていたワゴン車が停止する。
パンッ――風船の割れるようなケタタマシさが聞こえてドッと汗が噴き出た。
後ろを振り返れば、例のイカついオッサンにスキンヘッドオッサン、マジで俺達を殺す気だ。
もはや誘拐どころじゃない。
これは殺人未遂だ。
闇夜にも関わらず逃げる俺達の足元を、輩は的確に射撃してくる。
銃弾が掠めたのか、先輩が前のりになった。
つんのめる彼女の体を支え、大丈夫かと声を掛ける。
頷く先輩は懸命に歯を食い縛って足を動かしていた。素晴らしい根性だ。俺も見習わないと。
だけど、このまま闇雲に逃げ続けてもいずれは捕まる。なにか、なにか逃げ延びる手立ては……。
泣きそうだ。
手立てという手立てが思いつかない。
どんなに偏差値の高い高校に行こうと、勉強ができろうと、俺は頭が良い人間ではないことを実感する。
本当に頭の良い人間ってのは、咄嗟な場面でも機転が利く奴を指すに違いない。
救いといえば、鬱蒼としている雑木林が俺達の身を隠してくれるってことくらいだ。



