優しく、だけど強く励ましてくれるアジくんは本当に男前だ。
俺もアジくんみたいに男前になってみたい。
俺、別に肉食にならなくても良いんだ。
男のポジションと女の子の前で男らしく振舞えれば、草食でも全然OK。アジくんみたいに男前になれたらなぁ!
「憧れだ」
目を輝かせてアジくんを見つめていると、
「男に気持ちを持っていかれるのは許しがたいことだぞ」
と柔らかな声。
俺はドキ―ッ、と鼓動を高鳴らせた。
思わず持っていた紙パックを落としそうになる。
どうにか紙パックを掴んで俺は慌てて立ち上がった。
視線を上げれば、俺のぎこちない行動に笑声を漏らしている噂の先輩の姿が。
俺のいるところ必ず先輩が現れてくれるよな。
ま、まさか先輩の教育係、お松さんが俺を見張っているんじゃ。
有り得そうで恐いんだけど。周りをキョロキョロ見渡してお松さんの姿を探していると、フライト兄弟が俺の背後に回った。
「いやぁ羨ましいねぇ」とアジくん。
「美人さんのお迎えだなんていいなぁ」とエビくん。
二人揃って俺の背中を押してきた。
勢いよく押されてしまったせいで俺はつんのめる。
先輩とぶつかる前に足を踏ん張らせて態勢を整えた。先輩にぶつからなくて良かった。
ホッと胸を撫で下ろしつつ振り返ってガンを飛ばす。
姿のかけらも見当たらない。
フライト兄弟め、逃げやがったな。
絶対に俺の状況を楽しんでいるよな。
俺の悩みを親身になって聞いてくれたのか、それとも今の状況を更に面白くするために掻き回してくれたのか。
ちぇっ、明日覚えていろよ。
舌打ちを鳴らして俺は視線を戻す。
そこには面白おかしそうに俺のことを見ている鈴理先輩の姿があった。
意識していると自覚した途端、何だか妙に緊張してくるんだけど。
やっぱ美人だよな、先輩。獰猛な肉食獣だけど。
「お? イチゴミルクオレか。どれ一口」
「あ、それ俺の飲みかけっ」
飲んじゃったよ。俺のイチゴミルオレ。
今度はいつ飲めるか分からないのに。大事に飲みたいのに。
じゃなくて、俺の飲みかけなのに! 間接キス!
……まあ、もっと濃いヤツしているから問題ないとは思うんだけどさ。



