前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―




「男の傷は勲章になるっす。でも女の傷は、一生……傷になるっす。先輩、貴方は女の子、傷を作っちゃ駄目っすよ」

「こんな時に性別など」


「聞いて下さい。俺は貴方の持論を否定しているわけじゃありません。ポジションは逆転したままでもいい。

貴方は俺のヒーローであり、俺は貴方のヒロインです。

ただ一時的にポジションを譲ってもらう時がきます。

どんなに攻め女でも先輩は女性、受け男な俺でも男なんっすから。

俺は貴方を庇ったわけじゃない、できることなら貴方を助けて俺も避けたかった。じゃないと貴方が傷付くのが目に見えてましたから。


でも、そこまで体は動かなかったみたいです。残念っす。

だけど先輩、忘れないで下さい。俺は貴方を守りたかったし、現在進行形で守りたい。

だって俺は男なんっすよ。

普段は俺がヒロイン、先輩がヒーローっすけど、今は俺がヒーロー、先輩がヒロインっす。こればっかしは譲れないっすよ。断固として。


全部が終わったら、ちゃんとヒーローの座は返しますから。
リード権はいつだって貴方にあります。受け身の俺が攻め身の貴方をリードできるかっつったら、そりゃ不可能なんで」


未だに不満不服不機嫌な顔を作る先輩は舌を鳴らし、「あたしは認めん」あくまで自分がヒーローなのだと唸る。

彼女は守られるより、守りたい性分なのだろう。しょうがないヒーローだ。


何を言っても了承は得られない。

だから今だけ勝手にヒーローの座を分捕ろうと思う。これだけは絶対に譲れないから。


「このツケは後だ。あんたが嫌がっても鳴かす」


おお、怖いこわい。

物騒なことを口走るお嬢様に俺は目尻を下げ、「後でキスをちょうだい」とおねだり。


唇を尖らせたままの彼女は嫌というほどやってやると返事した。


なんという残念な逆転光景。


ま、しゃーない、そういうカップルだ俺等は。



閑話休題、和気藹々と会話するのは此処までだ。グズグズしていると夜が明けちまう。


俺は痛む横っ腹を無視して、眼鏡オッサンをロープで縛ることにした。

俺達を縛っていたあのロープで、念入りに手足を縛っておく。また起き上がられても困るからな。


鉄扉には工具袋とオッサンを置いて開かないよう工夫した。

こうすれば仮に向こうが中に入ろうとしても時間が稼げる。