鉄扉向こうにはお仲間がいる。
仮に外に出たとしても見つかる可能性がでかい。内部の構造も把握できていない。
だったら逃げる場所はひとつ。
窓の向こうだ。
向こうも危険が一杯だろうけど、鉄扉向こうよりはマシだ。
取り敢えずあの窓には踏み台が入りそうだから、工具袋を積み重ねる必要がある。
彼女とそう話していたら、背後から嫌な気配を感じた。
大きな図体が背後にいると、本能が察する。
まさか。
逸早く俺は振り返る。
そこには気絶していた筈の眼鏡オッサン、ん? 眼鏡なしオッサン?
ええい、どっちでもいい。
とにかく眼鏡オッサンが室内にあった鉄パイプを持って真横に薙ぎ払ってきた。タフなオッサンめ!
「先輩っ!」
反射的だったと思う。
俺は標的に定められている先輩を突き飛ばした。
同時に、鉄パイプが横腹に入った。
痛いのなんのって呼吸が止まるほどの激痛、黒痣ができそうな痛みが襲い掛かってくる。
だけど俺はそのパイプを掴んで勢いのまま引っこ抜く。
「そっ、空!」
先輩の声を無視すると、「あん、まっ」しっかり鉄パイプを握って、「女の子に」相手の鳩尾を、「手ぇ出してんじゃねえぞ!」勢い良く突き返す。
うぐっ、キモイ声で唸るオッサンにさっきの仕返しだと口端をつり上げて、俺は気丈に鼻を鳴らしてみせた。
痛恨の一撃を食らわせられたおかげか、後は先輩がトドメを刺してくれる。
小さな体躯を活かし、懐に入って一撃二撃、拳を入れた後、回し蹴り。傾くオッサンの胸倉を掴んでそのまま一本背負いをかました。
酷な光景を見た気がしないでもない。
何もそこまでしなくても、なんて同情も出てきたり、こなかったり。
ボケッと見ていた俺だけど、思い出したように腹部が悲鳴を上げた。
横腹の痛みに耐えかねてついつい片膝を立てる。
この痛みは半端じゃない……あのオッサン、手加減ってのを知らないな。
呻く俺の隣で先輩がしゃがむ。
「馬鹿! 何しているのだ!」
盛大に怒声を浴びせてきた。大層ご立腹のようだ。
「なんで庇ったりしたんだ」
問い掛けに、「庇ったんじゃなくて守りたかっただけっす」俺は精一杯の虚勢を張った。
ものすっげぇ不満そうな顔を作る彼女に微苦笑を向ける。



