前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



その一瞬を突き先輩は手に持っている眼鏡ごと、相手の顔面に蹴りを入れる。横っ面を一蹴され、眼鏡オッサンは転倒。

向こうに転がる眼鏡を踏み割る彼女のその雄々しさと言ったら、彼氏も絶句だぞ、ははっ頼もしい強い怖い。


限りない棒読みで言いたい、俺の彼女は本物ヒーローだ。



「今の内に!」



先輩の声音に反応して、眼鏡オッサンは上体を起こした。


ガタイが良いせいか、一発じゃ失神しなかったようだ。

舌打ちを鳴らし、眼鏡オッサンは懐から凶器を取り出す。


拳銃……仲間は一丁ずつ持っているのか?!


ダガーナイフに拳銃、両手に凶器とか卑怯だ。

子供相手に大人げねぇ!


迷うことなく照準を先輩に合わせる眼鏡オッサンだけど、そうはさせるかっ!


俺は捨て身タックルで相手の体に突進した。


まだ安全レバーを下げていなかったおかげさまで銃弾が飛び出すことはない。


俺もろとも態勢を崩し床に叩きつけられた拍子で、凶器は工具袋へと滑り転がる。

これで銃はどうにかできた。後はダガーナイフのみ。


「このっ、舐めたことしやがって」


頭に血がのぼったオッサンが俺の首を引っ掴んでそのまま片手で締めてきた。

利き手でナイフを振り翳してくる。

苦しい、呼吸ができねぇ。



だけどあんたの終わりだ。



電光石火の如くオッサンの真横に移動した彼女を捉え、俺は不敵に笑みを浮かべた。


同時に先輩が、


「空を押し倒していいのはあたしだけだっ!」


渾身の踵落としを脳天に炸裂。

その衝撃は凄まじいものだったのだろう。


眼鏡オッサン、あ、今は眼鏡なしオッサンはナイフを手放し、白目を向けて俺に倒れ込んできた。お、重っ。


相手を蹴ったくり、身を捩って脱出する俺は急いでオッサンの手放したナイフを口で銜えて拾う。


「ふぇんぱい。どうふぃふぁふ? ふぉれ。(先輩。どうします? これ)」
 
「あたしの手に乗せてくれ。先にロープを切る。こういう訓練も受けているから」

「わふぁりました(分かりました)」


俺はナイフを銜え直すために、刃先を銜え、柄を彼女の手に乗せる。


しっかり掴んだことを確認して刃先から離れれば、早速彼女は器用にロープを切り始める。


無事に切り終わったら、俺のロープも切ってもらった。


やっと両手が使える。自由を手に入れた気分だ。凝り固まった両腕を解しつつ、俺は彼女に視線を投げた。

「お次は」

「脱出だ」

ですよね、俺は賛同して腰を上げた。