「こんなことになるなら、エッチをしても良かったかもっすね」
馬鹿な台詞だけど、咄嗟の言葉がこれしか思いつかなかったんだ。
「まったくだ。あんたがいつも逃げるから」
先輩は不貞腐れ顔を作ってみせた。
また沈黙。
このまま夜明けを待っていたら俺達……バラされるのかな。
父さん母さんに何も言えず、それこそ実親の事故を思い出したことも言えず終わるのか。
こんな未来を知っていたら、もっと両親と向き合おうとしていたのに。
終わる。終わり。エンド。人生ハッピーエンド、じゃなくバッドエンドを迎えておしまいおしまい。
そんなの……そんなの嫌だ、此処で終わっちまうなんて嫌だ。
先輩だってそうでしょう?
ご姉妹やご両親とまた隔たりなく仲良くしたいでしょう? 俺達の人生これからでしょう?
故意的に誰かの手で終わる人生なんて真っ平ごめんだ。
向こうの都合で終わる、そんなのイヤに決まっている。
俺はまだ先輩と色んな場所に行かなきゃなんないんだ。
冬の天の川やダイヤモンド・ダスト。
先輩が俺の和服を見たいと言ってくれたから必然的に夏祭りだって行く予定に入っているんだ。
イチゴくんとだって折角仲良くなれたし、アジくんやエビくんとだってもっと遊びたい。大雅先輩とも遊んでみたい。
どうせ終わる人生なら、一か八か懸けてみてもいいんじゃないだろうか。
喚き嘆き怖じていたって“その日”は必ず来るんだから。
「鈴理先輩。小説みたいな台詞言いますけど……俺と運命を共にして下さりませんか?」
真っ直ぐ彼女を見つめる。
間を置くこともなく、「あたしの台詞を取るな」毒づかれた。
「それはあたしが言う台詞だ」
むくれ、一変して真顔になる先輩は急ごうと周囲を観察し始めた。決まりっすね。
俺達は此処では絶対終わらない。終われない。終わらせない。
まず何をするか、決まっているこの部屋から出るんだ。
そのためには見張りをどうにかしないといけないんだけど、はてさてどうしようか。



