「明日の18時に身代金を持ってこさせる。指定場所はまだ未定だが、金さえ入ればこっちのものだ」
この声はスキンヘッドオッサン。
キャツ曰く、明日の夜に俺か先輩の両親に金を持ってこさせるらしい。
場所を決めている。
遺憾なことに聞いたこともない場所だった。
なんとかホテル前っぽいけど、そのなんとかホテルが聞き取れない。残念だ。
耳を澄まし続ける。
曰く、明日の早朝6時から7時に掛けて、身代金の場所指定並びに人質を解放する。ただし、バラして。
は? なんで? おいおいおい嘘だろ。
俺達のご遺体を母さん達に返すつもりか、ンなのあんまりじゃねえかよ。
金が手に入らなくてもいいのか?
それとも金だけ巻き上げられる策でもあるのか?
どちらにしろ俺達にとっては凶報だ。
自分の命の危機に悲鳴と嘆きを漏らしたくなったけど、グッと堪えた。
冷静になれって方が無理だけど、取り乱して今、バラされても「……」だろ?
「お前は見張っとけ。どうせ逃げられないが念のためだ。早朝まで見張っとけ」
ご命令が下った。
名指しされたのは眼鏡オッサン。
他の仲間は最終打ち合わせがあるのか、部屋を出て行き、例のオッサンは扉前を陣取って胡坐を掻いた。
手にはダガーナイフという名の凶器が。
息を詰め、俺と先輩は暫し様子見。
最初こそ真面目に見張っていた眼鏡オッサンだけど、
「ガキが逃げるか?」
すぐにオサボリモード。
時間も時間だから、欠伸を零してうたた寝を始めた。
簡単に説明をしているけど、かれこれ二時間は経っている話だぞ。
隙を窺うべく、俺達は根気強く待っていた。
完全に眠りこけていることを確認して、俺と先輩は身を捩り、どうにか上体を立たせて顔を見合わせる。
彼女は切迫していた。俺も切迫しているんだろう。
普通そうだろう。命の危機に直面ちしまったらさ。ひとりだったら発狂しているところだ。
先輩がいてくれるから辛うじて冷静を繋いでいるカンジだけど、ああっ、くそ、胃がキリキリしてくる。吐き気も少々、だ。
ちょっとばかし沈黙を作って口を閉ざしていた俺達だけど、蚊の鳴くような声で俺は呟いた。



