そっと顔を上げてくる鈴理先輩は、「心配を掛けさせるな」目を潤ませながら罵って、俺の切れた口端を舐めてきた。
行為を受け止めて好きにさせる。
これが俺なりの詫びで慰めの在り方だ。
興奮状態がちょっと落ち着いたのか、先輩はまたひとつ透明な真珠を零して、体は大丈夫かと気丈に笑みを浮かべてくる。
その涙を目にした俺は胸を鷲掴みにされた気分になった。
初めて見る彼女の涙は、ただただ綺麗だった。
守りたい儚さを宿していた。
凛とした空気を取り巻いていた。
嗚呼、思う。
彼女はどんなにあたし様で雄々しく、男勝りでも女性なんだ、と。
――女性を守りたいって思うのは男の本能の一部かもしれない。
ダンマリになっている俺に、「痛いところでもあるのか?」先輩が顔を覗き込んできた。
息を吹き返した俺は微笑を浮かべて、首を横に振る。
言えるわけ無いよな。
泣いている貴方に見惚れていました、だなんて。
ましてや全力で守りたいとか思っていたなんて。
先輩、超嫌がりそうだもん。
守るとは何事か、それはあたしの役目だ! なーんて毒づいてくるに違いない。
それでもいい。後でどう攻められてもいい。
俺は今、貴方を守りたいと思っている。一端の男として。
「ロープが邪魔っすね。ヒロインな俺は今、ヒーロー様に抱き締められたいですよ」
受け男らしい台詞を吐いてみる。
ヒヨコのように唇を尖らせて、「それで苛々しているんだ」先輩はやっといつもの調子で返事した。
それが嬉しくて俺は同調してみせる。
緊迫な空気に包まれているからこそ、いつもどおりの空気が荒んだ心を癒してくれた。



