「そっ。お前って、身分だの、お嬢様だの、あれこれ理由付けて結局のところ逃げているからさ。まずはお互い平等だってラインから考えてみようぜ。
お前と鈴理先輩は平等。同じ立場。美人とか身形とかそんなこともなし。ぜーんぶ同じ。そうだとしたら空、お前はどうなんだ?」
アジくんの問い掛けに俺は口を閉ざす。
理由を付けて俺、逃げていたのかな。
そう指摘されたら、そうかもしれない。
俺、先輩に対して逃げる癖があるから。
いや向こうが押せ押せ攻め攻めだったりするから反射的に逃げちまうんだけどさ。
「同じ立場だったら」
俺は鈴理先輩のことを考えてみる。
もしも同じ立場だったら、俺、先輩のことをどう思っているんだろ。
鈴理先輩のあれやこれや思い出が蘇る。
いきなりキスされて、所有物宣言されて、性交しましょうなんて誘われ、いや襲われて。
毎日のように追い駆け回されて。
攻め女(肉食)と自負、俺を受け男(草食)と言って食べたがっていて。
欲と貞操の攻防戦を繰り広げていて。
俺は身震い。
思わず二の腕を擦った。
「先輩が普通の女の子なら、俺、一発でOKしていたと思う。思うよ。嫌い? 好き? それ以前に俺は身の危険を感じていますが何か?」
「……まあ空くん、心中は察する。だけど意識はしているんだろ?」
エビくんが優しく俺に問いかけた。
そりゃ意識はしていると思う。
こうやって身の危険を感じているところからしてもそうだし、異性としても、今日は少しだけ自覚したような、しなかったような。
あんな濃厚な毎日を過ごしているんだ。意識しない方がおかしいと思う。
「取り敢えず意識は芽生えていると思う。好き嫌いは別としてさ」
「先輩から好きだって言われたのか?」
「一応……言われたけど」
「だったら迷うこと無いじゃないか。空くん、まずはお付き合いしてみるんだ。君はあれこれ考えて逃げてしまう悪い癖がある。
何っていうのか、草食動物の本能ってヤツかな。危険が来る前に逃げるっていうアレだよ。君は厄介事が起きる前に逃げてしまえ、みたいなところがある。少しは危険に立ち向かわないと」
エビくんの助言に俺は片眉をつり上げて、声を窄めた。



