両親は気にする事無く俺に接してくれるんだけど、絶対に俺が向こうと距離を置きたがっているのに気付いている。オーラで分かる。

時々苦笑するその顔が、これまた申し訳なさを掻き立てちまって。


あああっ、こうなっちまうって片隅で分かってはいたんだよなっ!

虚勢を張っていた頃から、こうなっちまうってことは薄々勘付いていた。


だからこそ虚勢を張って両親に気遣われないようにしよう、しよう思っていたのにっ……くそうっ、上手くいかないな人生ってもんは。人生ってしょっぱい、すっぱい、ほろ苦い。


頼れる鈴理先輩に相談したら、「今は仕方が無いさ」気持ちに整理がつくまで、焦らずにいくしかない……だって。


そりゃそうなんだけど気まずいんだよな。家にいる時間が。

一緒にいることがこんなにも気まずく思うなんて、今までなかったのに。


「はぁああ」


大きく溜息をついて俺は、教室のドアを引き中に入る。

重い足取りで席に向かおうとしたその足が自然と止まった。


だって俺の席に鈴理先輩が座って読書しているんだもん。

おっと、俺は教室を間違ったのか?

いやいや、此処は混クラ、男子も教室に数人いる。

女クラの鈴理先輩が此処にいるってのがおかしい。


てか、まず先輩、学年が違う。


「鈴理先輩、おはようございます。何しているんっすか、俺の席で」
 

考えても答えは導けないから、彼女に答えを聞くことにした。

文庫を閉じ、先輩はおはようっと顔を上げてくる。


「空を待っていたんだ」


実は渡したいものがあってな、と持参していた紙袋をごそごそ。

渡したいもの?

首を傾げる俺は取り敢えず、鞄を机横に置いて先輩の行動を見守る。


「少しでも空が元気の出るようにとプレゼントを持ってきたんだぞ。喜べよ」


そういう彼女に、「え?」俺は瞠目。


プレゼント?

あ、もしかして先輩、元気のない俺を気遣って……そうだよな、俺がこんなになっちまってから肉食攻め攻め行動改め不謹慎言動その他諸々をあんまりしなくなったし。

ときどーき攻めたそうな顔をするけど、今は我慢だと自己暗示掛けているところをこっそりと見ちまった。


先輩でも我慢できるんだな、とか失礼なことを思いつつも彼女なりの優しさには感謝していた。