時間をリセット、まき戻しができるのならば両親の事故に遭う直前に戻りたい。


チビだった俺に聞き分けよく親と公園に行くよう強要したい。


そうしたら親は死に直面しなかっただろうから。



けど、過去があって今の俺が在る。

叔父叔母である育ての親を父さん、母さんと呼ぶ事だってなかっただろうし、住む地域だって違っただろうし、エレガンス学院に入学するかどうかも怪しい。


過去をやり直したいと思えば思うほど、失いたくない時間もあるから難しいところだ。

こんなことを思ったって時間は戻ってこないんだけどさ。


先輩が返答に困っているようだから、別の質問に塗り替える。


「人が死んだら星になるって、よく物語のフレーズで出てきますよね。胡散臭いフレーズっすけど、でも、信じてみてもいいですよね。それともやっぱり夢物語っすかね、これ」


俺の問いに「いや」即答で否定してくれる彼女は、


「あたしも信じているさ。いや寧ろあたしが信じているんだ。きっとそうだ」


キッパリ言い切った。


先輩は星伝説にまであたし様を発揮するんっすか? どんだけ凄いんっすか、あたし様っぷり。



でも、貴方が言うならきっとそうなんだろう。

すんなり受け入れられる俺がいる。



どれだけ窓辺に佇んでいたのか。

「寝るか」

先輩の合図で終わりの時間を迎えた俺は、迷うことなくベッドに沈んで眠りに就いた。


すっげぇ疲れてたみたいだ。

色んな事が今日一日で一気にあったせいだろう。


現在進行形で感情がごちゃごちゃしている。


明日以降、冷静に自分を見つめてまた悶々悩むことは目に見えているから憂いを抱くけど、でも今はなんも考えたくない。眠りたい。


俺の隣を陣取っている彼女に警戒心を抱く余裕もなく、瞼を下ろす。


先輩は珍しく何も仕掛けては来なかった。いつもだったら、暴走する行為も今日はない。


ただただ俺が眠りに入ってしまうまで髪を優しく梳き、額に唇を落として、そっと。




「Good night. Sweet dreams, baby」