前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



三点リーダーを絶え間なく出す俺は、ガタブルで階段を上ろうとしている先輩に視線を流す。


異変に気付いてくれた先輩は、「怖いか?」と一声。

ブンブンと首を横には振れず、正直に頷いて「どうしよう」俺は苦言を漏らした。


このままじゃ遅刻しちまうって。


ああでもでもっ、上るって行為が無理。上に向かう。それが俺にとってめっちゃ怖い。
 

こんな情けない彼氏を放っておかないのが我が彼女。

「手を貸せ」

誰かと手を繋いで上にのぼれば問題ないだろうと提案してくれた。


それで効果があるのかどうかは分からないけど、駄目元でレッツトライ。

右手で手摺、左手で先輩の手を握って、一段一段ゆっくりと段を上がっていく。
 

不思議なことに先輩と一緒に上ると怖さが半減した。
 

なんでだろう、先輩が一緒だとホッとする。

ぬくもりが恐怖心を緩和しているっつーのかな? 彼女の手のぬくもりが安心するんだ。


ブルブルと震える体を無視して、俺はしっかりと彼女の手を握りながら階段を上った。

「先輩」

「もう少しだ」

励ましを貰って俺はどうにかこうにか目的の階まで辿りつくことに成功する。


上り終えたことにホッと胸を撫で下ろし、先輩に礼を告げた。


おかげ様で無事に階段を上りきることができた。

先輩がいなかったら始終、階段麓でオドオドブルブルしていたに違いない。


うははっ、それで遅刻とか担任どういう言い訳すりゃいいんだ?! お笑い種だぜ、マジで。
 

大したことはしていない、と先輩。


だけど神妙な顔つきで高所恐怖症が酷くなったんじゃないかと指摘してくる。


階段から下りるだけじゃなく、上ることにさえ恐怖心を抱くとはある意味重症だぞと正直にズバッと言ってくれる。
 

変に遠慮をしてくれないところが有り難いな。先輩らしい発言だ。

俺は「そうっすね」と曖昧に笑って、チラッと後ろを一瞥。


どどーんっと待ち構えている某急斜面さまに眩暈がした。

今日は移動教室もある。ひとりで上り下り、果たしてできるのだろうか。その光景を想像するだけで眩暈、吐き気、動悸が。